10畳用エアコン1台でF式全館冷房をやってみた
こんにちわ@・ェ・)めー。
エアコンの買い換えをきっかけに30坪のお家、畳数にすると54畳の空間に対して10畳用のエアコン1台で全館冷房を行ってみました。
Twitter(X)やインスタを見ると一条工務店のお家や高気密高断熱の建物では小型のエアコン1台だけで冷房できるという事例を目にします。そこで実際にわが家でも実現できるのか、やってみた実際の温湿度や消費電力のデータを交えてお伝えします。
結論:できました
さっそく結論なんですけど、できました
よかった
間取りとエアコンの位置は相当検討したからな
無事成功しました。実際に2024年の夏について6月から8月までの温湿度を計測しましたので発表します。
なお、この記事は特定の条件下(高気密高断熱住宅、2階リビング、適切な間取りとエアコン配置など)における個人の実験結果であり、全ての住宅で同様の効果が得られるわけではないです。あくまで私の体験談として読んでくださいね。
10畳用のエアコン1台で30坪の冷房に挑戦!
6月の室温は平均25.6度、湿度は12.44g(52.2%)でした
7月の室温は平均26.4度、湿度は12.81g(51.4%)でした
8月の室温は平均26.7度、湿度は12.59g(49.7%)でした
電気代は96円+187円+129円=412円でした
我が家は延床面積30坪で2階建ての戸建てです。2階リビングに設けたエアコンで全館冷房を行っています。
間取りは非公開ですが2階で冷やした空気は建物中央の階段を通じて1階へ落ちていき、1階も含めて家全体で快適な温湿度を実現することができました。
それでは実際の温湿度を見てみましょう。こちらは晴れて暑い日だった7月19日の18時の各部屋の温湿度です。この日の最高気温は34.9度でした。
一般的に戸建ては2階の方が暑くなりがちですが、わが家は2階のエアコンで冷房を行っているので2階の方が涼しい傾向にあります。それに加えて冷たい空気は下に移動するという空気の特性を使って1階にも冷気が落ちています。そのため2階のエアコン1台で冷房ができるというわけです。
どんなエアコンを買ったの?
それでは、実際に購入したエアコンについて見ていきましょう。2024年にエアコンを買い換えたときは日立の10畳用でRAS-KW28Nという2023年度のモデルを購入しました。
もちろんこのエアコンは特別なものや最上位モデルではありません。よくある去年の型落ちモデルを家電量販店で比較的割安に購入というパターンです。
以前使用していた富士通ゼネラルのエアコンと日立のエアコンを比較するとこんな感じです。参考に日立の8畳用と6畳用モデルも併せて記載しています。
モデル年度 | メーカー | 型番 | 畳数 | 定格能力 | 最大能力 |
---|---|---|---|---|---|
2014年度 | 富士通ゼネラル | AS-Z40D2W | 14畳用 | 4.0kW | 5.4kW |
2023年度 | 日立 | RAS-KW28N | 10畳用 | 2.8kW | 3.3kW |
2023年度 | 日立 | RAS-KW25N | 8畳用 | 2.5kW | 3.1kW |
2023年度 | 日立 | RAS-KW22N | 6畳用 | 2.2kW | 2.8kW |
以前は同じ設置場所に14畳用のエアコンを使っていましたが、なんと10畳用にサイズを下げることに成功しています。今年の検証で10畳用でも十分に冷房できると分かったので、将来エアコンが壊れて買い換えるときの予算も14畳用から10畳用に抑えることができます。
なぜ10畳用で足りるの?
それは建物の性能が良いからです
わが家は延床面積30坪の2階建てです。この30坪を畳数にすると約54畳になります。そこに10畳用として販売されているエアコンを設置するなんて、どう見ても明らかに足りないと思われるかもしれません。実際に冷房の定格能力は数値的にも4.0kWから2.8kWへ下がっており冷房を行う力は14畳用から10畳用になったことで以前の70%に低下しています。
その理由について、まずはエアコンに必ず記載されている性能表記を見ていきましょう。
この画像のように、家電量販店やエアコンのWebサイトはどのエアコンも「○畳用」といった畳数の表記ありますね。これは「JIS C9612」という規格で定められています。ところが、、これは昭和55年以前の無断熱の家に取り付ける場合で計算されているものなんです。当然ですが現代の断熱性の高い建物では表記よりもっと広い空間に対応できます。この規格は相当古い基準のままで全然更新されていないということを知っている人はそう多くないと思います。
現代の高断熱住宅の性能を考慮すると、JIS規格の畳数表記は過剰な能力を示す場合が多いです。
人間の心理として「少し余裕を持った性能を買おう」と考えるのはよくあることですが、高い断熱性を持つ建物に対して大きなエアコンを選定することはとても過剰な性能になってしまいます。そこでわが家は建物の性能と想定する外気温を元に適切なエアコンの能力を調べて購入することにしました。
最適なエアコン容量の計算
具体的に建物の性能から最適なエアコンはどのように決めるのでしょうか。
まずは建物の性能を把握して
その数値を元に計算していく
今回、最適なエアコンの容量を計算するにあたってフエッピーさん作成の「F式エアコン容量・COP実測計算シート」を活用させていただきました。
これに建物の性能や目標とする室内の温度、外気の温度を入力することで最適なエアコンの容量を求めることができます。
このシートによって計算された結果に加えて間取りやエアコンの配置場所など実際に家で暮らすときの色々な要素を考慮して10畳用1台で行けると判断しました。
とっても便利な計算シートなんですがどこに何を入力したら良いのかちょっと分かりづらいのが難点です。特に重要な箇所についてわが家の入力値を記載しました。
項目 | わが家の入力値 | 説明 |
---|---|---|
Ua値 | 0.37 | 建物の断熱性能 |
C値 | 0.6 | 建物の気密性能 |
床面積 | 100 | 延床面積 |
室内温度 | 25.5 | 目標の室温 |
室内相対湿度 | 50 | 目標の湿度 |
室外最高気温 | 41 | 外気の最高気温 |
室外平均最高気温 | 33 | 外気の平均最高気温 |
Ua値、C値、床面積はお家の設計資料や実測値を元に入力しましょう。私は経年劣化を考慮して少しだけ値を大きく(悪い方に)して余裕を持たせました。
室内温度は快適と思える目標の温度を入力します。25.5度は暑くて仕方ないという方はもっと低めの温度を入力しましょう。
室内相対湿度は50から55%前後がとても快適な湿度です。
室外最高気温と室外平均最高気温がくせ者です。ここ数年毎年のように観測史上の最高気温が更新されています。エアコンの買い換えサイクルはおよそ10年として今後10年で到達するであろう最高気温を入力します。歴史的な猛暑の日にエアコンが効かないとなってしまうと命に関わりますからね。
こんな感じで計算してみたところ、わが家で必要なエアコンは定格能力2.3kW、最大能力3.2kWという結果になりました。これに合うものは10畳用のエアコン(定格2.8kW、最大3.3kW)なので、今回14畳用から10畳用にサイズダウンしたという訳です。
万一の保険は忘れずに
実際にわが家はエアコン1台で冷房に成功していますが、新築時に各部屋にエアコンのスリーブ(取付穴)は用意しておくことをオススメします。これは予想を超える猛暑が襲ってきたり、既存のエアコンが壊れたときの予備、ゲームや運動で局所的に冷やしたいというニーズがあるからです。
2階のエアコンで1階が十分に冷えない場合は1階のエアコンも付ければ良くて、エアコン1台で全てまかなうことが正義というワケではありませんからね。
ロードバイクの室内トレーニングなどは個室のエアコンが必要だね
余談ですがヒツジさんはお家を建てて引っ越した後でロードバイクに出会いました。その結果1つの居室がいつの間にか自転車部屋へと変貌を遂げましたが、室内ローラー用にこの部屋にもエアコンがあって良かったと思っています。トレーニング中はものすごく熱くなるし汗もかくので。
もしお家の性能がもっと高かったら?
もっと性能の高いお家はどうなる?
さてさて、わが家は10畳用のエアコンが適切という計算結果になりましたがもっと高性能なお家はどのような結果になるでしょうか。わが家のi-smile+は一条工務店の商品で下位グレードの性能です。上位グレードはもっと断熱性能が高いのでエアコンの選定にどれくらい変化があるか確認してみましょう。
先ほどのパラメーターに一条工務店の代表的な商品を当てはめると以下の結果になりました。
商品 | Ua値(仮定) | 必要なエアコン能力(概算) |
---|---|---|
GRAND SMART | 0.20前後 | 6畳用 |
i-smart | 0.27前後 | 8畳用 |
GRAND SAISON | 0.35前後 | 10畳用 |
i-smile | 0.35前後 | 10畳用 |
HUGme | 0.42前後 | 12畳用 |
必要なエアコンの能力は地域や間取りとエアコンの配置場所などで大きく変わるので、あくまで参考程度です。ですがさらに高性能な建物は6畳用のエアコン1台で家全体を冷房できる可能性があるというのは驚きの結果ですね。
エアコンの選定基準は?
必須条件は再熱除湿があること
さてさて、エアコンのメーカーは複数あって同一メーカーの中でも複数の機種があります。その中でわが家がエアコン購入時の必須機能として再熱除湿があるものを第一に考えました。再熱除湿とは室温を下げずに湿度だけ下げることができる機能です。これがあると気温がそれほど高くない梅雨の時期も快適に除湿することができます。
私が購入した日立の2023年モデルは大きく4シリーズがありました。上からX、W、G、Dです。上2つには再熱除湿の機能があるのでXシリーズかWシリーズになるというわけですね。Xシリーズにしか搭載されていない機能は特に必要性を感じなかったのでWシリーズになりました。
メーカーによっては再熱除湿機能を搭載していない場合があります。
2024年時点で日立、三菱電機、富士通ゼネラル、コロナは再熱除湿のあるエアコンを販売しています。詳しく調べるとダイキンは再熱除湿の方式が複数あったり、パナソニックはここ10年ほど再熱除湿機能が省かれていましたが、2024年の一部モデルから再び再熱除湿ができるようになったりしています。○○○メーカーの×××というシリーズ一択という訳ではなく、購入する時点で販売されている機種を自分で調べてから買うと良さそうです。
梅雨時の除湿は?
除湿モードで過ごしました
梅雨時は雨が多くて気温が高くないものの湿度が高い日が続いてしまいます。室温を下げずに湿度だけ下げる再熱除湿の出番ですね。
絶対湿度13gを下回ることを目標にしてエアコンは25度除湿に設定しました。
1階寝室の6月の温湿度は以下の通りです。絶対湿度の平均は12.44g、梅雨時期ですが上下の変動も少なくとても安定した湿度を実現できました。
夏の冷房は?
冷房モードでほとんど設定は変更しなかったな
最高気温が35度を超えない猛暑の日は冷房運転、23度から25度、風量最小で快適に過ごすことができました。
最高気温が35度を超える酷暑の日は冷房運転、23度、風量自動で過ごすことができました。
実際の居室のデータをみていきましょう。1階寝室の7月の温湿度は以下の通りです。
月末に急激な温度上昇が見て分かりますね。月末、特に7月29日は40度に迫る記録的な猛暑を観測しました。
1階寝室にもエアコンがあるので寝るときに付けようか迷いましたが、暑くて寝苦しいほどではなかったので今年は使うことがありませんでした。27度を超える室内でも寝苦しさを感じなかったのは湿度を適切に下げることができたからですね。
続いて8月の温湿度は以下の通りです。
8月は月末に湿度が高まっています。こちらは台風接近に伴った停電に備えて蓄電池の残量をキープする目的でエアコンの設定温度を高くして節電を行っていました。そのため除湿する力が落ちて湿度が上昇したという具合です。
独自モデルのワナと対策
エアコンを買ってから気づいてヒヤリとしました
今回の買い換えにあたって、わが家は家電量販店のケーズデンキで日立のエアコンを購入しました。
購入したあとで気付いたのですが型番が「RAS-KW28N」となっており、日立のWebサイトの型番「RAS-W28N」とは微妙に異なります。型番にKが増えていることから、このエアコンは「RAS-W28N」を元にしたケーズデンキ独自モデルということが分かりました。
独自モデルは元々の製品から室外機の塗装などいくつかの変更点があるようです。個人的に大きな違いはリモコンにありました。標準のモデルは温度のボタンと湿度のボタンがありますがケーズデンキ独自モデルは湿度のボタンがありません。
でも私が重要視しているのは湿度コントロールなので湿度を指定できないというのは大きなデメリットでした。機種の選定で失敗してしまった…と思ったのですが、色々ためしているうちに解決策がみえてきました。リモコンから湿度の指定ができなくてもスマホのアプリからであれば湿度を指定することができます。
これで除湿の際は湿度40%を目標値として設定することができました。
本格的な暑さが訪れる前の梅雨時期で室温はそのままで、湿度だけ下げたいといったときに有効な設定かと思います。
エアコンの消費電力は?
エアコンを24時間稼働させるとすごい電気代になりそう
実際の消費電力をみていこう
エアコンの消費電力が計測できると冷房にかかった消費電力や電気代が計算できます。そこでエアコンとコンセントの間にSwitchBotプラグミニという製品を付けてエアコン単独の消費電力を取得することができるようにしました。その結果、7月は1日から31日まで24時間ずっと動かして314kWhの消費電力でした。
資源エネルギー庁の資料を参照すると夏期における一般的な家庭の電力消費量は13.1kWh、そのうちエアコンで使う電気は34.2%だそうです。
1か月のエアコンにかかる電力消費量は13.1kWh*34.2%*31日=139kWhになります。わが家は314kWhだったので一般家庭の2.25倍の消費電力をエアコンに使っていることになります。
たしかに24時間エアコンを付けていれば消費電力はとても大きくなりますね。24時間ずっとエアコンを付けておく理由は夫婦共に在宅勤務なので常にエアコンが必要になることと、連続して運転することで室内の湿度が高い時間を作らないことを目的としています。そうすることで夏でも非常に快適な室内空間を作り出すことができます。
環境省の統計によると暑い夏期のエアコン平均使用時間は4時間から8時間だそうです。次に多いのが8時間から12時間で、この2つを合わせると全体の46%になります。
先ほどのエアコンにかかる電力消費量が8時間で計算していると仮定すると24時間使用は単純計算で3倍の電力を消費します。そう考えるとわが家の2.25倍は建物の性能が効いている結果といえそうですね。
エアコンの電気代は?
太陽光パネルと蓄電池のおかげで
電気代はほとんどかからないんです
わが家はエアコンに関して一は般家庭の2.25倍の消費電力を使っていることが分かりました。一見すると電気代がかなり高くなっていそうです。
ですが、わが家には太陽光パネルが13.475kWと蓄電池が12.4kWhというどちらも大容量と言える大きさのものが設置されています。
晴れていれば太陽光パネルで発電した電気を使うことができるので電気代は気にする必要がありませんでした。さらに夜間は蓄電池を使うことで電気を買わない運用が実現できています。
2024年夏期3か月の電気代は6月:96円+7月:187円+8月:129円=412円でした。エアコンの電気代ではなくて電力会社からの請求金額がこれです。もちろん太陽光パネルと蓄電池という初期費用はかかりますが、何年で回収見込みとか色々分析していますので興味のある方はこちらのまとめ記事をご覧下さいませ。
F式について
先ほど紹介したフエッピーさんのサイトにはF式というエアコンの運用方法を提唱されています。
わが家の建物設計時点でF式のことは目にしていたのでとっても参考にさせていただきました。もちろんF式を使った快適な冷房を目指していたのですが、間取りの制約から一般的にいわれているF式の要素をいくつか当てはめることができませんでした。
下記にF式の手法とわが家の場合を記載します。一般にF式のセオリーと呼ばれているものは★マークを記載しています。
設定とか配置 | セオリー | F式(と、よく聞く手法) | わが家の場合 |
---|---|---|---|
エアコンの稼働 | ★ | 24時間 | 24時間 |
設定温度 | ★ | 23度 | 23度 |
風量 | ★ | 最小 | 最小 |
風向 | ★ | 下向き | 水平 |
エアコン設置場所 | 2階階段ホール | 2階リビング | |
エアコンの向き | 階段に向けて1階に冷気を落とす | 階段と直角 | |
吹き抜け | 吹き抜けを利用して1階に冷気を落とす | 吹き抜けなし |
F式とは
F式は個人が考案したものなので公式サイトや厳密な手順などが存在しない
私なりの解釈を記載するよ
間違っていたら教えてね
フエッピーさんが提唱する「冷房において湿度を下げることを目的としたエアコンの運用方法」です。
温度を下げることはどのエアコンにもできますが湿度をコントロールすることは容易ではありません。しかしながら湿度をコントロールして湿度を下げることでヒトの体感的にも快適でカビやダニを抑えることができます。エアコンを除湿機としても使用することで快適な住環境を実現するのがF式、というわけです。
以下にF式の要素について解説を行います。各要素は完全に独立したものではなくて複数の要素で関連があるのがちょっと難しいところです。
エアコンの稼働が24時間の理由
継続した除湿を行うためです。
家中の相対湿度を60%以下に保つことでカビやダニの発生を防止することに役立ちます。また、湿度が低いことで洗濯物の部屋干しも十分乾かすことができます。
梅雨時や夏の天気予報で「不快指数」という言葉を聞いたことがあるかと思います。不快指数を求める計算式というのが決まっていて気温と湿度によって数値で表されます。ヒトは同じ気温でも湿度によって体感が大きく異なります。夏の蒸し暑い27度と冬の乾燥した27度、どちらも同じ気温ですが明らかに夏の方が汗でベタついて不快というのは感覚的に分かると思います。
夏でも冬のような湿度の低い環境を実現するために途切れない除湿が必要になります。
設定温度が23度の理由
1つめはエアコンのサーモオフを避けるためです。
エアコンは設定温度に達するとそれ以上冷やす必要がなくなるので単なる送風運転になります。この時エアコンから出てくる風の温度は変わりませんが、高い湿度の湿った空気が出てきます。これはエアコン内部の熱交換器に結露した大量の水が送風によって空気中に乗ってしまうからです。この現象を湿気戻りなどと呼んでいます。
一般的な25度や27度といった設定温度ではエアコンが設定温度に達したと判断してしまうので、あえて設定温度を下げているというわけです。そのため、F式で設定温度を23度にすることは室内を23度にしたい訳ではありません。実際の室温は冒頭で示したとおり25度から26度になっています。
また、必ず23度に設定しないといけない訳ではないです。外気温や間取り、断熱性能によって変わりますが過去にF式を成功させてきた方の情報から、おおよそ23度なら成功するという目安になります。エアコンにはまだ部屋が涼しくなっていないぞ、と思わせてずっと冷房を稼働させることが目的です。
設定温度を低く保つことで除湿運転を維持し、結果的に室温は25度台後半に維持され快適な湿度と室温を実現しているということですね。
2つめは除湿量を高めるためです。
エアコンが冷房を行うと空気中の温度と湿度が変化します。温度に関しては直感的に分かりますが湿度はどうでしょうか。
たとえば27度設定と23度設定では23度設定の方が除湿される量が多くなります。これは高い温度に比べて低い温度の空気は湿度を含むことができないという空気の性質に由来します。
F式は除湿を目的としているのでエアコンの設定温度が低い方が好ましいということですね。
23度にしたら部屋が必要以上に寒くなってしまうのではという点については下記の理由によって回避することができます。
風量が最小の理由
こちらもエアコンのサーモオフを避けるためです。
例えば風量を自動にすると室内は短時間で冷却されてサーモオフになってしまいます。これを避けるために風量を最小にして冷房運転を途切れないようにします。
ただし40度前後の酷暑日など、風量最小では冷房が間に合わない場合があります。その時は必要に応じて風量を上げて調整を行います。
エアコンの設置場所が2階階段ホールの理由
理由は3つあります。エアコンの風を人にあたらないようにする、ある程度開けた空間ということ、冷気を2階と1階の両方へ届けることができることです。
大前提としてF式はエアコンを24時間稼働かつ23度設定のとても冷えた空気を出すことで除湿を行います。
居室や書斎のエアコンでこの設定にしてしまうと寒すぎて人に悪影響が出てしまいます。そのため日常的に人がいない空間にエアコンを設置することが適しています。
また、居室や書斎のような小さく閉じた空間はエアコンが十分に冷却できたと判断してサーモオフが起きてしまいます。サーモオフを起こさないためには開けた空間が適しています。
最後に冷気を2階と1階の両方へ届けることができる場所が適しています。2階に設置したエアコンから風が出る方向に階段や吹き抜けなどがあると1階にも冷気が届きやすいですね。
これらを考慮すると階段ホールや吹き抜けにエアコンを設置するのが適切というわけです。
風向が下向きの理由
エアコンから出てきた冷たい空気を1階に落とすためです。
一般的な空気の法則として暖かい空気は上に、冷たい空気は下に動きます。ここで必要なのは空気の温度差です。温度差があるから冷たい空気が下に落ちていきます。良くないパターンとして風向をスイングしてしまうと空気が攪拌されて温度差が無くなるため、なかなか1階へ冷たい空気が落ちてこないことケースがあります。
F式ひつじ流について
よくあるF式のセオリーは1階リビングの2階建てを対象にされることが多いです。ですがわが家は2階リビングであることが大きな違いで、もちろん吹き抜けもありません。階段部分にエアコンを設置することは不可能では無いんですが、一番涼しくなってほしいリビングとそこに隣接する書斎が暑くなってしまうことが予想されます。
そこでリビングに設置したエアコンで2階全体を冷やして階段から冷気を落とす作戦にしました。結果は冒頭でお伝えしたとおり大成功となりました。そして家中に温湿度計を設置して温度と湿度の遷移をみていくと、2つの法則が分かってきました。この法則のおかげで2階リビングのエアコン1台で家中を快適にできたといえるでしょう。
家中に温湿度計設置して計測すると
空気の動きが見えてきました
法則その1:温度は拡散性が少ない。湿度は拡散性が高い
リビングは涼しいのに居室は暑いといったことは日常的にあると思います。このように温度はある程度のカタマリになりやすく局所性があり、拡散性が少ないといえます。カタマリになるからこそ冷たい空気は下に移動するといった動きを持つことができます。
それに対して湿度はどの部屋でも似たような数値になることが分かりました。温度とは逆にカタマリにならず広がって均一になる性質を持っています。もちろんお風呂やキッチンなど湿度の発生源は除きます。
法則その2:乾いた空気は重くて下がる。湿った空気は軽くて上がる
湿度は絶対湿度というもので単一容積の空気中の水分量をグラムで表すことができます。乾いた空気は絶対湿度7g、湿った空気は絶対湿度15gといった具合になります。
絶対湿度7gの空気は上に行き絶対湿度15gの空気は下に行く思われがちですが実際には逆の動きになります。
空気中に含まれる水蒸気の分子量は乾燥空気の主成分である窒素や酸素の分子量よりも軽いため、水蒸気を多く含む空気は密度が低くなります。水蒸気を含めば含むほど空気の密度は低くなってきます。
密度の違いにより、乾燥した空気(相対的に密度が高い)は下降し、湿った空気(相対的に密度が低い)は上昇するという動きが発生します。
湿度は拡散しやすく家中で均一に近づく性質がありますが、密度に着目すると、除湿された乾いた空気は密度が高く下降し、水分を多く含む湿った空気は密度が低く上昇します。
これを利用することで2階で除湿した乾いた空気は1階に落ちていくことになります。
F式ひつじ流の空気の動き
夏の日にエアコン冷房を開始した場合の1階、2階の空気はこんな感じになります。
ざっくりいうと2階を冷やせば1階も涼しくなる
2階の温湿度の遷移
2階リビングのエアコンを稼働して2階の空気を冷却し始めます。初期の2階の絶対湿度は高いですがエアコンから出る風によって徐々に低下します。
時間の経過とともに2階の温度は下がり同時に湿度も低下します。
1階の温湿度の遷移
初期の1階の絶対湿度は高い状態で冷房の直接的な影響は受けません。
2階で冷房が始まると冷やされた空気が階段を通じて1階に少しずつ流れ込みます。
時間の経過とともに冷やされた空気は密度が高くなるため1階に流れ込みやすくなります。これにより1階の温度も少しずつ低下します。
2階から1階へ流れ込む空気の絶対湿度はエアコンの影響を受けて低下しているため1階の絶対湿度も少しずつ低下します。
建物全体の遷移
2階:エアコンの除湿効果により絶対湿度は低下し温度も設定温度に近づきます。
1階:2階からの冷たい空気の流入により温度と絶対湿度も少しずつ低下します。
まとめと注意点
という具合でわが家は2階リビングに設置した10畳用のエアコン1台で家中快適な温湿度を実現することができました。もちろん建物の断熱性、気密性、間取りや周辺環境などたくさんの要因によって成功できるかは変わってきます。一般的な高気密高断熱住宅でも同様に可能とは限りません
一般的な高気密高断熱の住宅でも同様に実現可能とは限りません。あくまで私の自宅の体験談としてこの記事は記載していますので、効果を保証するものではありません。実践される場合はご自身の責任において行ってくださいね。
冷房に関するこんな考え方もあるよということで紹介してみました。2階リビングのお家は少ないですが、空調計画の参考になれば幸いです。
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